闇の子供たち 2008・8・2公開
監督・脚本 阪本順治 シネマライズ
主題歌 「現代東京奇譚」桑田圭祐



キャスト
江口洋介 南部浩行
宮崎あおい 音羽恵子
妻夫木聡 与田博明
佐藤浩市 梶川克仁
鈴木砂羽 梶川みね子
豊原功補 清水哲夫



ネタバレあり
2008・8・2 初日 10:00&12:50


衝撃のラスト・・この言葉をいろんなところで目にした。
そして、耳にした。
正直ラストの映像は、想像していたほどではなかった。
もっとすごい映像が飛び込んでくるんだろう〜と思っていたから。

でも・・映像そのものよりも、もっと深い衝撃が、映画が終った瞬間どっと押し寄せてきた。ラストが衝撃だったわけではない。「闇の子供たち」この映画そのものが、もっとも衝撃だった。

とても早い段階から、これでもか、これでもかと性的虐待を受ける子供の姿が描かれる。それこそがあまりにも壮絶で、想像を絶する行為だった。単なる性的欲望のはけぐちとは言い切れない、精神的な虐待行為というものが、よけいに嫌な気分にさせられる。

この時に、これは子供には見せられない映画だな・・と感じてしまった。TVで宣伝できないのもわかった。上映映画館が少ないのも理解できた。でも、だからこそ意味ある映画なんだと思う。

物語は、闇の臓器売買への取材から進んでいく。
江口君演ずる新聞記者南部が、生きたまま臓器移植される実態を追いかけるのだが、それを大きな1つの軸にしてストーリーをまとめていっても、よかったのではないかと思う。

その臓器の提供者が、貧しく売られた子供たちであって、その子供たちの居場所が売春宿なのだから、確かに幼児性愛者の性的虐待描写は必要なのかもしれないが、極力最小限で抑えてもらいたかった。そうすればもう少し多くの人が見られる映画になったのではないか・・と、それが残念だ。




売春宿の管理人みたいなことをしているチットが、印象的っだった。子供たちにヒドイことをしながらも、どこかに彼なりの情みたいなものは持っていた。彼も加害者であり被害者だったからだ。小さい時に母親が黙認する中、幼児性愛者に買われて虐待行為を受けていた。。ラストで売春宿が摘発されて、警察に逮捕される中、なんだか捕まることを望んでいたような表情をする。と同時に、客である幼児性愛者たちも逮捕される。それらの人間を見るチットの顔が、まるで復讐でも成し遂げたようでもあった。このチットの存在は、とても考えさせられるものだった。

もしもあの売春宿にいた子供たちが、そこでそのまま大人になったらどうなっていくのだろう。そこでしか生きられないチットのように、新たな加害者となっていくのだろうか。


今回、宮崎あおい演じるNGOの音羽恵子には、ほとんど共感できなかった。特に臓器移植を待つ日本人夫婦、佐藤浩市&鈴木砂羽夫婦の家でのやりとりにはイラっとした。自分の子供を助けるために、よその国の子供を殺してもいいのか?
いいはずがない・・よくないにきまっている。
そんなことはあたり前のことなのだ。
日本人夫婦にも、ちゃんとわかっているのだと思う。
しかし、このまま死んでいく息子を黙ってみていられない、なんとかしてやりたい、その気持ちは痛いほど伝わってくる。
恵子は正しい。正しいけれど、それだけではどうにもならない。
南部が言ったとおり、責める相手は彼らではなく、弱みにつけこんで臓器売買している本当の悪人たちなのだ。



ここから
(マジ、ネタバレすぎ)

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2回みたけど、疑問がたくさんある。私はよくわからないんだよね。

臓器売買の取材は、結局どこまで表に出たのだろうか。
南部は、どうなったのだろうか。
妻夫木たちが、南部の部屋を片付けているので、察するところはあるけど、それなら、どういう形でどうなったのか・・まさかあの集会騒ぎの時??南部の病というのは・・(江口君がそう言った)、過去のものだったのか・・それとも現在進行形だったのか・・だったらなぜ、この仕事を受けたのか・・。子供たちのためなんだろうか。
妻夫木君が、ラストに車から降りて、何に驚いていたのか。あの時、子供の楽しそうな声がしていた、あそこはどこなのか。
などなど・・・。


結局南部も幼児性愛者だった。
男の子を買っていたということで・・。
で、その自分を振り払って生きていたということなのか・・。
常に自責の念にさいなまれつつも、どうにもできなかったのか・・。
洗面所いっぱいに張られた、幼児性愛者の犯罪の数々。その真ん中に自分の姿を鏡に映して、オレもこの犯罪者たちと同じだ・・と、思っていたのだろうか。

それは・・せつない。


現代東京奇譚が流れ、エンドロールが流れて、「淋しくて淋しくて、魂(こころ)に死に化粧 忘れられぬ面影が逝くなと呼び止める」の歌詞が、聴きながら目で追うと、よくわからない想いがつきあげてくる。

それは生きながら心臓を取られた少女だったり、屈辱をうけて死んでいった少年だったり、生きているのにゴミ袋に入れられ、家族にも2度捨てられて死んでいった少女だったり、そして自分の性癖に苦しみ、もがいて生きていた南部だったり・・そんな悲しい人間の生き様が浮かんで、せつなくて苦しくてたまらなくなる。

これは主演がどうのとか、演技がどうの・・という映画ではなく、阪本順治監督の映画だな・・と思った。絶賛とか、そういうのではなくて、すごい映画だ・・のひとことにつきる。



2008.8.2著



3回目ネタバレでもいい人どうぞ。